2020年 02月 28日
無理な努力で辛くなる
「すべての悩みがなくなるような力を求めてはいけません」と、古代ギリシャの哲学者、エピクロスはいっている。
この言葉は、アメリカの心理学者、デヴィッド・シーベリーのいう、「不幸を受け入れる」ということと同じ内容を、別の言葉で表現している。
「矛盾した存在」である人間として生まれて、すべての悩みがなくなるようなことはない。
人間として生まれた以上、残念ながら棺桶のふたが閉まるまで、悩みはなくならないだろう。
もしすべての望みが叶って、すべての悩みがなくなることがあるとすれば、それは多くの人の恨みを買っているときである。
つまり、ものすごい「見えない心の借金」を背負ったときである。
そのツケは、必ず払わなければ死んでいかれない。
多くの周りの人の恨みを買って、自分一人が幸せに死んでいかれることはない。
自分のすべての望みが叶って、自分の悩みがなくなるときは、周りの人は我慢をさせられたときである。
そのツケは必ずくる。
自分の我がままが通って、すべての望みが叶ったときというのは、十年後にものすごい不幸を呼び寄せたときである。
ものすごい不幸の種を蒔いたときには、それに気がつかない。
十年後、二十年後には、ものすごい不幸に成長している。
もう一度言う。
そのツケは必ずくる。
つまり自分が得意になって何かをしているときに、人から恨みを買っていることがあるということである。
得意になってはいけない。
何か物事がうまくいっているからといって、いい気になってはいけない。
そのとき人から恨みを買っている。
多くの場合、人は得意絶頂のときに墓穴を掘っている。
それをよく表している格言が「英雄末路哀れなり」である。
自分のすべての望みが叶っているときが、崖から転がり落ちているときである。
本人がそれに気がついていないだけである。
だから「不幸を受け入れる」ことなく、すべての悩みがなくなるような力を求めてはいけない。
すべての悩みがなくなったときには、実は知らない間にデッドエンド近くにきている。
そう考えると「不幸を受け入れる」ことは、人間として生まれもっとも幸せな生き方なのである。
人生への「気力」の有無はこんなところにもあらわれる
友人の大学教授と話すとき、最近とみに話題にのぼるのが、「学生が無気力になった」ということだ。
たとえば、レポートを提出しない学生がいるので、理由を聞いてみると、何を調べたらいいかわからないので書けないと答える。
一昔まえの学生なら、本屋や図書館に行ってあれこれ探し、それなりに参考文献を見つけ出して書いていたところだ。
いまでは参考文献を教え、それがどこの図書館にあるかということまで、手取り足取り教えなければならないこともあるという。
このような学生がふえたのも、やはり過保護に育ち、親や教師に言われたとおりのことしかしないで成長してきたからだろう。
他人から言われるままに動く、他律的な生き方をしていれば、自発的に何かをしてみようという意欲がわかず、無気力になるのも当然かもしれない。
やる気のある人間とは、言い換えれば自律的な人間のことである。
自分で自分のやることを決め、それに従って行動できる人間というわけだ。
したがって、やる気のある人間になるには、他律的な生き方から自律的な生き方をする人間に自分を変えていかなければいけないということになる。
と言っても、大げさに考え込む必要はない。
自分のことは人任せにせず、自分でするように心がければいいのだ。
たとえば、会社で自分のお茶は自分でいれる、コピーなども女子社員に頼まず自分でとる、などということから始めてもいいだろう。
着るものにしても、自分で身につけるもの、たとえばネクタイ、くつ下、ハンカチなどは、母親まかせ、妻まかせにせず、つとめて自分で買うようにすることも必要だろう。
とくに服装の場合は、自分で買ったものを身につけることによって、自分で自分を演出したのだという一種の自信を持つことができる。
また、物を買うということになれば、どこの店で何を売っているか、何が流行しているかということにも敏感にならざるをえず、自分の周囲にいろいろと関心を向けるようにもなる。
街を歩いていても、ただ通りすぎるだけではなく、一種の「参加する姿勢」が出てくるというわけだが、このような自信や姿勢を持つということは、それだけ人生に対し積極的になり、意欲的になったということに他ならない。
と言うと、自分は忙しくて買い物に行く時間などないと言う人もいるかもしれないが、決してそんなことはない。
ちょっとした買い物の時間くらい、日頃ちょっと心がけていれば、すぐに見つけ出せるものである。
それを時間がないと言うのは、とりもなおさず自分のやる気のなさの口実にすぎないと言っても過言ではないだろう。
by jonysad10
| 2020-02-28 21:46
| 人付き合い